Nuw Mouse の由来 その1

もう30年も経つのだろうか、今の仕事を始める5年ほど前だと記憶しているが、そのころ私はヘドンの210サーフェスというプラグがとても気になっていた。実際そのアクションは少し難解だった。その前部に取り付けられた円形の金具は、見た目から波紋や飛沫を起こすためのものかと思われがちだが、実は左右に向きを変えるウォーキング・ザ・ドッグアクションのためのものだった。疎らな葦の間、リリーパッドの隙間などダブルフックの効果と相まって実に見事なアクションをしてくれる。
障害物や水草などバスが間違いなく潜んでいそうなポイントにサーフェスプラグで果敢に攻めることができないだろうか。210をヒントにその課題に挑戦していた。

Heddon 210 Surface
Heddon 210 Surface
構想と試行錯誤

一方でドッグアクションのためのプラグの形状を考えるとき、参考にしたのはアーボガストのジッターバグだった。前に取付けられたカップ状の金具の威力も素晴らしいもので、コミカルなアクションと奏でる音は魅力的だった。しかし210、ジッターバグいずれの金具も障害物をクリアーするには少し大きすぎる。ジッターバグのカップのサイズはもっと小さくしてもその効果は期待できるのか・・?

Arbogast Jitterbug
Arbogast Jitterbug

Boozyのボディを前から2/3ほどカットし、太い方、細い方それぞれの端にサイズが異なるバグのようなカップ型の口を削り2種類のプロトを幾つか作って試した。
恐らくアクションを生む為には太い方が水を捉える面積が大きくなり、より効果が期待できる予測はあった。削り込む窪みの直径は? その角度は? アイの位置は? などと考えるべきファクターは多すぎるほどあった。もちろん専用の道具はないのでハンドカービングと紙ヤスリが頼りだった。

試作をしているとよくあること(と言うよりはいつも)なのだが、ついついアクションにばかり気持ちが傾いて、複雑で手間のかかる形になってしまう。
いざ数を作るとなると、とんでもなく厄介な形になり後悔することになる(笑)。

これらすべてが手探りで、こうした試行錯誤を繰り返している時は本当に夢中になれた。夜布団に入っても考えながらいつの間にか眠りに落ちている。とても幸せな睡眠へのイントロであり、我ながらこのようなことがよくよく好きなのだと思う。今になって思えばこの構想を巡らせている時間こそがいちばん幸せなひとときだったと思える。

試作の結果は予測を裏切り、ボディの細い方を前に、糸を結ぶヒートンをボディ横断面の中心より少し上に付けたヤツのアクションに興味が湧いた。
移動が少ない左右へのターン、時に加わる小さなホップ音、前部のカップは小さくコンパクトだがジッターバグのなごりを留めていた。そしてボディ前部が少し細く絞られている形が障害物をクリアーするためには理に適っていた。
水に浮いた姿がネズミに似ていたので皮の尻尾を付けることにした。

その2 デビューとネーミングにつづく