プラグの由来(Bow BubbとBoozy Torpedo)

当時の私は休みになるとプラグ探しのショップ巡りが常態化していた。その日は特にWスウィッシャーに的を絞って探していたのだが、あるショップで「S社のWスウィッシャーは無いですか?」と尋ねると「売れないから製造中止らしいですよ」(欲しくてたまらないのがここにいるのに・・)
釣果を優先するあまり魅力あるプラグがマイナーなものになり、マーケットから姿を消してゆく、何より「遊びの道具」として寂しかった。

この日の出来事が後にこの仕事を始めるきっかけとなるのだがその動機の流れやプロセスはまた別の機会に話すことにして、この時、Budd&Joey Companyから現在の商品仕様で発売する最初のプラグアイテムはWスウィッシャーと心の中で決めた。

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Old Fishing Lures and Tackle

「OLD FISHING LURES AND TACKLE」という本が私の教科書のようなもので、ヘドンDowagiacミノー100、150シリーズのWスウィッシャーのページを毎日のように眺めていた。
お恥ずかしい話、ページいっぱい書かれた英文はほとんど読まず、写真とサイズから実寸大の型紙を起こしコピーメイクをした。材料の樹種を変えては試作品を作るものの一向に上手く浮かばない。Wスウィッシャーは浮かぶものと思い込み、それがシンキングだったと理解するのにかなりの時間を要した。
それでも試行錯誤を重ね、ようやく左右合わせて3本のトリプルフックの付いたいかつい姿のままトップウォータープラグに仕立てた。

そしてそのプラグの名前を考え始めたとき、なぜだかサン=テグジュペリ著の「星の王子様」に出てくるあまり聞き慣れない名「バオバブの木」のことがふと浮かんだ。
そこで「バオ」を「バウ」(Bow)(ボート前、船首の意味)と読み替え、「バブ」を泡(Bubble)からBubbと読み替えた。これを合わせてバウバブ(Bow Bubb)とこじつけ命名した。

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Bow Bubb – AF color (1992)

今はいぶし銀メッキのタグを使っていますが、始めはクロムメッキだった。
アイは5mm径のもの使っていて、いずれも懐かしい。

発売当初、このプラグに大いに興味を示してくれたのは岐阜のショップ「ビッグバズ」のオーナー、今は亡き河合良成氏(彼との出会い、思い出もまた別の機会にお話しします)だった。
彼は無類のヘドンプラグのファンでありBow Bubbが意図するところを充分理解してくれていた。そして笑みを浮かべながら「次は5本フックだね」と、私は彼に背中を押されてトリプルフック5本をまとったBoozy Torpedoを作ることになる。
写真は彼との思い出が詰まった初作のひとつです。
「Boozy」とは「酔っ払い」の意味で、その左右にターンするアクションが水に絡んでのらりくらりと動く、酔っ払いの千鳥足のイメージです。
実際には魚雷が酒を飲むはずもない(苦笑)。

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Boozy Torpedo – P color (1992)

初めてのテレビ取材の時、故河合良成氏に使って貰ったBoozy Torpedo。
彼との思い出が詰まったプラグです。

初めて見るWスウィッシャーの金属パーツの多さと、その見た目のいかつさはおおよそ魚を誘う道具とは思えない、果たしてこれで魚が釣れるものかと疑ったのは私ひとりではないと思います。しかしその実力は周知の如くであり、見た目とのギャップも含めていまだに私が心魅かれるプラグです。