Budd & Joey News

Budd&Joey のプラグを創り始め25年目となりました。プラグ作りの昨日までのことそしてこれからについて、日々の試行錯誤やちょっとしたニュースなど少しずつ話したいと思います。

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Nuw Mouse の由来 その2

デビューとネーミング

その実践デビューはというと、それまで私自身も試投とアクションテストのみで釣果は無かったのだが、それは突然に、かつ密かに、私以外の釣り人による試し釣りという形ではじまった。

岐阜の故河合良成氏にアングラーをお願いしてはじめてテレビ(某国営放送局)の取材を受けた日のこと。カメラが止まった後の流れで彼にこの「ネズミ似のプラグ」を手渡し使って貰った。彼も始めて見るその姿に興味津々で、すぐさま投げては楽しげに笑みを浮かべながら「うん、うん」と呟き、そして夢中になってアクションを試していた何投目かに1尾を釣り上げてしまった。そして私に囁いた。
「これおもしろい! 良い意味でやっちゃったかも知れないね」
「このプラグの良いところは誰が使っても同じようなアクションが出せること」と評した。
私はこれまでの試行錯誤の思いを心の隅に押し込み、素直に嬉しく思った。

ネーミング

私と河合氏はこの日の為に前もってロケ地の溜池を探していた。
幾つかの野池と川を回って堤防を車で走っていた時のこと、眼下左に見える小さい池に、私はそれまでに見たことのない大きな生物(ケモノ)が悠々と泳いでいるのを見つけた。
驚いて思わず「あれは何?」と河合氏に尋ねた。「あ、あれはヌートリア、見たことない?僕たちはヌーって呼んどるよ」という答え。
こんな他愛もない会話だったが、私には初めて実物を目の当たりにしたヌートリアのインパクトが強く、彼等が呼んだ「ヌー」を使って「Nuw Mouse ヌーマウス」と名前を付けた。

実はNuw Mouseが現在の仕様になるまでに少し変遷があり、当時の私はダブルフックを入手する術を持っておらず、トリプルフックを使っていた。河合氏の実釣もトリプルフック2本だったし、発売当初はトリプルフック3本といった仕様だった。

Budd&Joey Nuw Mouse 33
Budd&Joey ヌーマウス 33
Budd&Joey Nuw Mouse 22 & Kid 22
Budd&Joey Nuw Mouse 22とKid 22

しかしこれでは210サーフェスのような障害物をクリアーする能力は備わっておらず、当初の構想はまだ満たしていなかった。のちにマスタッド7826のダブルフックを入手することができるようになりその思いは達成することができたが、中には当初のトリプルフック3本仕様の方がダブルフック2本仕様のものより好きだと言われるユーザーの意見もある。

後の逸話として、発売当初はショップなどへの問い合わせの折、その見た目から「ホッパーですか?」「いいえ、ペンシルです」とプラグのカテゴリーがどれに属するのか判断が微妙だったことから苦慮されたようだった。どこかのショップのオーナーが使われた「テーブルターン」と言うアクション表現はNuw Mouseがきっかけだったように記憶している(私の記憶違いかもしれません)。

たまに「作っているプラグの中でイチオシは?」と問われることがあり、その時は思わず「Nuw Mouse」と答える。今でも良い季節の夕暮れ時のオカッパリにはロッド1本にネズミを一匹結んで出かけてしまう。

Nuw Mouse の由来 その1

もう30年も経つのだろうか、今の仕事を始める5年ほど前だと記憶しているが、そのころ私はヘドンの210サーフェスというプラグがとても気になっていた。実際そのアクションは少し難解だった。その前部に取り付けられた円形の金具は、見た目から波紋や飛沫を起こすためのものかと思われがちだが、実は左右に向きを変えるウォーキング・ザ・ドッグアクションのためのものだった。疎らな葦の間、リリーパッドの隙間などダブルフックの効果と相まって実に見事なアクションをしてくれる。
障害物や水草などバスが間違いなく潜んでいそうなポイントにサーフェスプラグで果敢に攻めることができないだろうか。210をヒントにその課題に挑戦していた。

Heddon 210 Surface
Heddon 210 Surface
構想と試行錯誤

一方でドッグアクションのためのプラグの形状を考えるとき、参考にしたのはアーボガストのジッターバグだった。前に取付けられたカップ状の金具の威力も素晴らしいもので、コミカルなアクションと奏でる音は魅力的だった。しかし210、ジッターバグいずれの金具も障害物をクリアーするには少し大きすぎる。ジッターバグのカップのサイズはもっと小さくしてもその効果は期待できるのか・・?

Arbogast Jitterbug
Arbogast Jitterbug

Boozyのボディを前から2/3ほどカットし、太い方、細い方それぞれの端にサイズが異なるバグのようなカップ型の口を削り2種類のプロトを幾つか作って試した。
恐らくアクションを生む為には太い方が水を捉える面積が大きくなり、より効果が期待できる予測はあった。削り込む窪みの直径は? その角度は? アイの位置は? などと考えるべきファクターは多すぎるほどあった。もちろん専用の道具はないのでハンドカービングと紙ヤスリが頼りだった。

試作をしているとよくあること(と言うよりはいつも)なのだが、ついついアクションにばかり気持ちが傾いて、複雑で手間のかかる形になってしまう。
いざ数を作るとなると、とんでもなく厄介な形になり後悔することになる(笑)。

これらすべてが手探りで、こうした試行錯誤を繰り返している時は本当に夢中になれた。夜布団に入っても考えながらいつの間にか眠りに落ちている。とても幸せな睡眠へのイントロであり、我ながらこのようなことがよくよく好きなのだと思う。今になって思えばこの構想を巡らせている時間こそがいちばん幸せなひとときだったと思える。

試作の結果は予測を裏切り、ボディの細い方を前に、糸を結ぶヒートンをボディ横断面の中心より少し上に付けたヤツのアクションに興味が湧いた。
移動が少ない左右へのターン、時に加わる小さなホップ音、前部のカップは小さくコンパクトだがジッターバグのなごりを留めていた。そしてボディ前部が少し細く絞られている形が障害物をクリアーするためには理に適っていた。
水に浮いた姿がネズミに似ていたので皮の尻尾を付けることにした。

その2 デビューとネーミングにつづく

メタルプレート(ヌーマウス)発売中

nuw mouse metal plate
ヌーマウス Metal Plate

たいへん遅くなっておりました第2作目のヌーマウスのメタルプレートが出来上がり発売を始めました。
前作のバンプキンジャック同様に、細かなデザインの表現と経年劣化に強い工法を用いて製作されております。お手持ちのタックルボックスに取り付けるなど工夫してお楽しみ頂ければ幸いです。

発売中
ヌーマウス
Metal Plate
Price: ¥ 1800 (税抜き)

nuw mouse metal plate
ヌーマウス Metal Plate

プラグの由来(Bow BubbとBoozy Torpedo)

当時の私は休みになるとプラグ探しのショップ巡りが常態化していた。その日は特にWスウィッシャーに的を絞って探していたのだが、あるショップで「S社のWスウィッシャーは無いですか?」と尋ねると「売れないから製造中止らしいですよ」(欲しくてたまらないのがここにいるのに・・)
釣果を優先するあまり魅力あるプラグがマイナーなものになり、マーケットから姿を消してゆく、何より「遊びの道具」として寂しかった。

この日の出来事が後にこの仕事を始めるきっかけとなるのだがその動機の流れやプロセスはまた別の機会に話すことにして、この時、Budd&Joey Companyから現在の商品仕様で発売する最初のプラグアイテムはWスウィッシャーと心の中で決めた。

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Old Fishing Lures and Tackle

「OLD FISHING LURES AND TACKLE」という本が私の教科書のようなもので、ヘドンDowagiacミノー100、150シリーズのWスウィッシャーのページを毎日のように眺めていた。
お恥ずかしい話、ページいっぱい書かれた英文はほとんど読まず、写真とサイズから実寸大の型紙を起こしコピーメイクをした。材料の樹種を変えては試作品を作るものの一向に上手く浮かばない。Wスウィッシャーは浮かぶものと思い込み、それがシンキングだったと理解するのにかなりの時間を要した。
それでも試行錯誤を重ね、ようやく左右合わせて3本のトリプルフックの付いたいかつい姿のままトップウォータープラグに仕立てた。

そしてそのプラグの名前を考え始めたとき、なぜだかサン=テグジュペリ著の「星の王子様」に出てくるあまり聞き慣れない名「バオバブの木」のことがふと浮かんだ。
そこで「バオ」を「バウ」(Bow)(ボート前、船首の意味)と読み替え、「バブ」を泡(Bubble)からBubbと読み替えた。これを合わせてバウバブ(Bow Bubb)とこじつけ命名した。

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Bow Bubb – AF color (1992)

今はいぶし銀メッキのタグを使っていますが、始めはクロムメッキだった。
アイは5mm径のもの使っていて、いずれも懐かしい。

発売当初、このプラグに大いに興味を示してくれたのは岐阜のショップ「ビッグバズ」のオーナー、今は亡き河合良成氏(彼との出会い、思い出もまた別の機会にお話しします)だった。
彼は無類のヘドンプラグのファンでありBow Bubbが意図するところを充分理解してくれていた。そして笑みを浮かべながら「次は5本フックだね」と、私は彼に背中を押されてトリプルフック5本をまとったBoozy Torpedoを作ることになる。
写真は彼との思い出が詰まった初作のひとつです。
「Boozy」とは「酔っ払い」の意味で、その左右にターンするアクションが水に絡んでのらりくらりと動く、酔っ払いの千鳥足のイメージです。
実際には魚雷が酒を飲むはずもない(苦笑)。

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Boozy Torpedo – P color (1992)

初めてのテレビ取材の時、故河合良成氏に使って貰ったBoozy Torpedo。
彼との思い出が詰まったプラグです。

初めて見るWスウィッシャーの金属パーツの多さと、その見た目のいかつさはおおよそ魚を誘う道具とは思えない、果たしてこれで魚が釣れるものかと疑ったのは私ひとりではないと思います。しかしその実力は周知の如くであり、見た目とのギャップも含めていまだに私が心魅かれるプラグです。

メタルプレート バンプキンジャック

バンプキンジャック Metal Plate
バンプキンジャック Metal Plate

昨年より発売致しておりますこのメタルプレートは、お買い上げ頂いたジュラルミンタックルボックスなどに取り付けてお楽しみ頂くよう製作しました。プレートは細かなデザインが表現できるスタンププレス工法を用い、経年劣化に強い合成七宝により着色されております。ボックスの他にもキーホルダーなどに工夫してお使い頂ければ幸いです。

今回はバンプキンジャックをモチーフにしています、他にも3種類ほど異なるルアーデザインでの製作を準備しております。
次回はヌーマウスをモチーフに只今製作中で、発売が決まりましたらお知らせいたします。

発売中
バンプキンジャック
Metal Plate
Price: ¥ 1800 (税抜き)

バンプキンジャック Metal Plate

2017 Release – Little Bumpkin

Budd&Joey – Little Bumpkin
Little Bumpkin F21 (Color: D) & 22 (Color: GOP)

小さめのボディに似合わず水に絡んだホップ音、そして左右のターンで派手なアピールと繊細なアクションを使い分ける誘い上手なやんちゃ者。

またフック1本のF21モデルは藻の中に空いた小さなポケットや漂流物の隙間などのピンスポットで、大きく開いた下アゴがフックのガードとなって障害物をクリアーします。
スローリトリーブで疎らな障害物をかわしながら、水面ギリギリのクランキングも魅力です。


Model F21
Body length: 70mm
Weight: ~19g
Model 22
Body length: 70mm
Weight: ~18g

Price: ¥ 6800 (税抜き)